会長挨拶

会長に就任して


原子衝突学会会長
長嶋泰之

この4月から城丸会長の後任として原子衝突学会会長を務めることになりました。

2020年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延でスタートするという、大変な幕開けとなりました。緊急事態宣言の発出とともに在宅勤務が要請され、大学や研究所で勤務する原子衝突学会会員の皆さんの多くは自宅からオンラインで仕事をせざるを得ない状況になっています。私が勤務する東京理科大学でも、原則として在宅勤務することが義務付けられています。それにもかかわらず、通学が禁じられている学生に対する遠隔授業のため、オンライン教育用の新たな授業体制づくりや教務に追われています。この事態が早くに終息することを願ってやみませんが、その糸口がなかなか見えてこないのが現状です。多くの大学で同じような状況に見舞われているようですが、それでも、原子衝突学会の会員の皆さんは、通常通りの活発な活動を進めておられるようです。

原子衝突学会は、日本における原子衝突および関連分野の研究を推進し国際的交流をはかり学術・文化の発展に寄与することを目的として、44年前に原子衝突研究協会として設立されました。現在、340名もの会員が日夜研究に邁進されており、その研究分野は原子衝突そのものから原子衝突が関連する放射線化学、放射線物理、レーザー、放射光、量子エレクトロニクス、固体内原子衝突、分子ビーム、化学反応論、原子核物理との境界領域、陽電子・エキゾチック原子分子、プラズマ、超音波・衝撃波、放電、天文・宇宙物理、生物・医化学応用などに広がっています。様々な分野が原子衝突の名の下で集まって学会を形成している様子は、前々会長の東俊行さんの言葉をお借りすると原子衝突が「分野横断的な横糸としてのユニークな役割」を担っています。この学会の魅力のひとつはそこにあります。単独の分野だけでは思いつかない研究手法を自分の分野に取り込んで新たな方向に発展させることが可能になっています。私の研究分野は陽電子を使った衝突が関係する物理学ですが、陽電子以外の粒子の技術を取り込んで研究を進めることに意義を感じています。思い出すと1990年頃に、宇宙科学研究所の市川行和先生、市村淳先生に声をかけていただいて、セミナーでヘリウム中でのポジトロニウムの熱化について話をさせていただいたのが、この学会(当時は協会でした)に入会したきっかけでした。つい最近のことのように思っていましたが、実はすでに30年もこの学会に所属しています。  私は会長として、少しでも原子衝突学会が発展するための活動ができればと思っています。まずは現在の新型コロナウイルスの蔓延下でも、会員間の情報交換を行って、研究の発展の後押しをしていくことは重要です。またこの学会がさらに発展する上で重要なのは、若手研究者を増やすことです。これまでも若手奨励賞の充実や国際会議発表奨励賞の設立、原子衝突セミナーや若手の会の開催など、若手人材の確保と教育のために多くの会員の方々が尽力してこられました。これに続けて若手パワーの拡大に尽力したいと思っています。

数年後には、我が国に、原子衝突の最も大きな国際会議であるICPEACを迎え入れる準備が進められています。それに向けて、この学会を発展させ、世界の原子衝突サイエンスの発展に大きく寄与できればと思います。

2020年4月 長嶋泰之


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